留守宅に商品を置いて帰る!? 生協ならではの不思議な光景
私が生協で働き始めた頃、最初に驚いたのが「留守宅への商品配達」でした。
在宅の方がいない場合でも、玄関前に保冷ボックスを置き、その中に冷蔵・冷凍商品を入れて帰る。これが当たり前の風景だったのです。ボックスにはもちろん鍵はかかっていないし、そのまま持ち帰ることもできる。正直「本当に盗難されないん?」と思いました。
けれど、これが案外トラブルにならない。約20年間勤務して、盗難の報告はほんの数件。海外なら信じられないかもしれませんが、日本という国の治安の良さ、地域との信頼関係の深さを実感するエピソードの一つです。
真夏の冷凍食品、大丈夫? 保冷ボックスの工夫
「夏場の配達、保冷は本当に大丈夫なん?」
そう思う方も多いかと思います。実際、真夏の炎天下では、玄関先に5~6時間置いておくこともあるため、冷凍食品の品質が気になるという声も聞きました。
生協では、保冷剤やドライアイス、断熱材を使った専用ボックスなど、季節に応じた工夫を施しています。特に猛暑時は、「冷凍優先配達」を実施し、先に届けたり、後に届けたり、ルートを回る工夫もしていました。
ただ、やっぱり多少の心配は残る。それでも、多くの組合員さんから「問題なかったよ」と言っていただけるのは、現場としても救われる思いでした。
販促は難しいけど、気持ちは楽だった「保冷班」
在宅の組合員さんには、商品のお届けついでにおすすめ品の紹介などができました。でも、留守宅ではそういうことはできません。いわゆる「保冷班」は、顔を合わせない分、販促が難しいというのが現場の本音です。
ただ、逆に言えばトラブルも少なく、精神的には少し楽。接客が苦手な新人スタッフには、むしろ保冷配達の方が向いていたかもしれません。
留守配が当たり前になるまで
私が入協した30年ほど前は、まだグループ配達や在宅率の高い地域が多く、玄関先でのやり取りが基本でした。それが、時代の流れとともに「個人宅配」へとシフトしていき、今や「留守配」がスタンダードに。
共働き世帯の増加、高齢者の一人暮らしなど、ライフスタイルの変化が背景にあります。
配達方法も変われば、接客スタイルも変わる。そうした変化を肌で感じながら、私は生協の20年を過ごしました。
【まとめ】「信頼」が支える生協の留守配達
- 生協では、お留守でも玄関前に商品を置いて帰る「留守配達」が一般的
- 盗難などのトラブルは非常に少ない
- 真夏の配達は工夫を凝らし、冷凍食品もできる限り安全に届ける
- 留守配は販促が難しい一方で、気持ちは楽な面もある
- 在宅配達から個人・留守配達へと時代は変化している
日本ならではの「信頼」と「助け合いの文化」が成り立たせている配達スタイル——それが、生協の「留守宅保冷配達」なのかもしれません。
よくある質問(Q&A)
Q. 保冷ボックスの中身が傷んでいたらどうする?
A. 万が一、品質に問題があった場合は、すぐに生協へ連絡すれば返金や再配達などの対応をしていました。
Q. 留守配達は事前に申請が必要?
A. はい。基本的には申込み時に「留守対応希望」と伝えることで、配達スタッフが保冷対応をしてくれます。
編集後記
現場で働いていると、当たり前すぎて気づかない「日本のすごさ」に気づかされる瞬間があります。留守でも商品が届き、誰にも盗られない。そんな国、そうそうありません。
長年現場にいたからこそ語れる、リアルな生協の姿をこれからも発信していけたらと思います。