はじめに
路線バス運転士として日々勤務していると、「あるある」と言いたくなる出来事にたびたび出会います。今回はその中でも、「バス停にいるけど、バスに乗らない常連さん」に関するお話です。
普段、通勤や買い物でバスを利用される方にはあまり知られていない“運転士目線の困りごと”を、少しだけ覗いてみてください。
バス停の“いつもの人”
あるバス停には、決まって同じ時間に長椅子に腰かけているお年寄りの方がいらっしゃいます。初めて見かけたときは、「この方、乗るのかな?」と当然思って、ドアを開けました。
でも、反応なし。目も合わさず、ただ座ってるだけ。なんかおかしいな…と思い、一度だけ声をかけてみたんです。
「いや、ただ休憩してるだけです」
すると、その方から返ってきたのはこの一言。
「いや、バス待ってへんねん。ちょっと腰休めてるだけやねん。」
あ、そうなんや…。たしかにバス停には屋根もあるし、長椅子もあるし、雨の日や暑い日は涼しいし…休憩するにはもってこいやろなぁ、と。
でも、こちらとしては「そこに人がいれば、乗るかもしれない」と判断してドアを開けるのが基本です。
運転士にとっては誤認の元
路線バスの運転士は、バス停に人がいれば止まります。
でもそれが「乗る人」か「ただ休んでる人」かは、パッと見ではわかりません。
降りるお客さんがいなくても、バス停を確認して「あ、人おるな」→バス停に停車→ドア開ける→誰も乗らない。
これ、けっこう地味にストレスなんです。
とくに時間との戦いになる朝夕のラッシュ時や、後ろに車列ができてる時なんかは、1秒でも惜しい状況。
「乗らないアピール」があると助かる
もちろん、休憩したい方の気持ちもわかります。
でも、できれば「私は乗りませんよ」っていうアピール、してほしいなぁ…と個人的には思っています。
たとえば座る位置をちょっと後ろにずらすとか、スマホを見ながら顔を伏せてるとか、ちょっとしたしぐさで乗らないのが伝わると、運転士としてはとても助かります。
他の運転士も同じように感じてる
同じ路線を担当している仲間の運転士と話していても、この話題はよく出ます。
「またあの人おったわ」「今日もスルーしといたけど、後でクレームにならへんかなぁ」といった不安の声も。
もし「運転士がスルーした!」と思われても、それは“乗らない人”とわかっているから、という背景があるのです。
バス停は“公共の場”、でも…
もちろん、バス停はバスを利用する人のための施設です。
でも、現実には「ちょっと腰を下ろしたい」「しばらく日陰で休みたい」という人も少なくありません。
そういう場として利用されているのもまた、地域に根ざした公共交通の一面。
ただ、その中で「誤解やトラブル」が起きないように、少しだけ思いやりをもってもらえると、運転士側もとてもありがたいのです。
まとめ:お互いのために“ちょっとした配慮”を
この仕事をしていると、ほんの些細なやりとりが、毎日の安全運行に大きな影響を与えることを実感します。
「バスに乗る人かも」と思えばドアを開ける。
「乗らないよ」と伝われば、スムーズに次へ進める。
ほんのちょっとの配慮で、お互いに気持ちよく過ごせるはず。
地域のバスを、もっと気持ちのいいものにしていきたいですね。
Q&Aコーナー
Q:バス停で誰かがいてもドアを開けない運転士がいますが、問題ありませんか?
A:乗車の意思が見られないと判断した場合、スルーすることがあります。ただし誤解を避けるために声かけなどを行う運転士もいます。
Q:バス停での待機や休憩は違法ですか?
A:違法ではありませんが、バスの利用者と間違われる可能性があります。周囲への配慮を意識していただけるとありがたいです。