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乗務日記:席を譲るって難しい?バス運転士が見たリアルな車内の一場面

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バスの運転席から見る車内の風景は、時に「人のやさしさ」がよく見える場所でもあります。でも、その“やさしさ”が、うまく伝わらない場面もあるんです。今回は、ある乗務中に起きた「席の譲り合い」にまつわる出来事をご紹介します。


ある日の乗務で起きた出来事

最近は運転手不足で減便しているため、お昼間も乗客も多い。ある日、車内は立っている方もおおく乗車率90%ぐらい。そんな中、抱っこひもをつけた主婦の方が乗ってこられました。すでに多くの席は埋まっていましたが、運転席のすぐ左後ろ、いわゆる「オタ席(おたく席)」が空いていたんです。

この席、なぜか空いていても誰も座らないことが多いんですよね。「座っていいのかどうか迷う」とか「運転士の視線が気になる」と言われたこともあります。

気づかない“空席”と気まずいアナウンス

その時も、誰も座らないまま、主婦の方は立ち続けていました。見ていて少し危なっかしいな…と思い、マイクで一言。

「お客様、こちらの席が空いていますよ」

すると、立っていた若い男性が「あ、ありがとうございます」と言って座ろうとしたんですが、それは違います、と心の中でツッコミ。マイクでは言えませんから、軽く首を振って後ろを見てもらうと、ようやく抱っこひもの主婦の存在に気づいたようで、そちらに譲ってくれました。

席を譲るタイミングって、本当に難しい

このような場面、実はよくあります。

見えているはずの空席に気づかない人、譲ろうか迷っているうちにタイミングを逃す人、そして譲ってほしいけど声を出せない人。

運転士としては、車内全体の安全を見ながらも、こうした細かな気配りも必要になります。ただ、いつもマイクで案内できるわけでもないですし、「誰に言ってるのか」が誤解されることもあるので難しいんですよね。

「譲って」と言いづらい現実もある

以前、車椅子のお客様を乗せた時のこと。スペース確保のために、優先席に座っていた高齢のお客様に「申し訳ありません、こちらの席をお譲りいただけますか?」とお願いしたところ、

「わしも足が悪いんやけどなぁ」

と返されました。その気持ちもわかるんです。でも、誰かのために少しだけ譲ることで助かる人がいる。そんな優しい世界であってほしいと、バス運転士としていつも思っています。


まとめ:小さな気配りが大きな安心に

席を譲るって、簡単なようでとても難しい行動。でも、その一歩が誰かの負担を軽くしたり、気持ちを温かくしたりします。

「誰かが声をかけてくれるのを待つ」よりも、「自分が気づいて動ける」そんな方が増えれば、バスの中はもっとやさしい空間になるはずです。


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