バス運転手 改善基準告示の概要と2024改正ポイント
「改善基準告示」は長時間労働に対応したバス運転者専用の告示(厚労省)。 2024年4月改正後、時間外上限(年960時間)や拘束・運転・休息時間などが厳格化されました 。
- 目的:オーバーリール輸送を防ぎ、安全性を確保するため
- 適用開始:2024年4月1日~(いわゆる「2024年問題」)
バス運転手 改善基準告示|拘束時間・運転時間・連続勤務
拘束時間:1日・月・年単位で厳格化
- 1日の拘束:原則13時間以内、延長は15時間まで×週3回まで
- 月・年単位:「1年3,300時間+1月281時間」または「52週3,300時間+4週間平均65時間」の二択運用
- 貸切・高速バス特例:労使協定で年3,400時間/月294時間、52週うち24週まで平均68時間延長(上限連続16週)
拘束時間の2運用パターン
◎年間・月間方式 │ 年3,300h以内、月281h以内
◎52週平均方式 │ 52週・年3,300h、4週平均65h以内
→延長特例あり │ 年3,400h/月294h、4週平均68hまで
運転時間:2日平均9時間以内+連続4時間まで
- 運転時間制限:2日平均で1日9時間以内
- 連続運転:4時間が上限、以後30分以上の休憩が必要

実際、私は大幅な遅れにより、連続運転4時間を超えそうな時、運転を交代した経験もあります。
休憩時間:一日の終わりから11時間以上、最低9時間を確保する必要があります
- 休息時間:勤務終了から11時間以上(最低9時間)
- 分割休息:4時間+7時間でもOK、2回まで・月半分まで

個人的には通勤時間を短くすることも大事と思っています。家から近い勤務先がお勧めですね。
連続勤務日数と法定休日
- 基準:36協定での法定休日は2週間に1日→連続勤務最大13日間が目安
- 12日規制:労基法35条上は12日連続まで、変形労働制で24日まで可能

収入を増やしたい運転手は、13勤する方もいます。私の場合、13勤はしません。健康管理も大事ですから。
2024年改正で何が変わった? 改善基準告示の新制度
2024年改正では、安全・健康観点から以下が改定:
- 拘束時間:日16時間→15時間、週延長上限3回に緩和
- 休憩時間:次の→8時間、基部11時間(最低9時間)増援
- 選択式運用:月単位と週単位での管理方式選択可能になった
- 2024年問題との整合:36協定の年960時間ルールとの調和対応
「道路運送法」と「運輸規則」はバス業界の憲法
道路運送法とは?
道路運送法とは、道路における自動車運送事業の適正な運営や、利用者の利益保護、公共の福祉の増進を目的とした法律です。簡単に言うと、乗客を安全・確実に運ぶための基本ルールを定めて法律です。
例えば、以下のような内容があります。
・バス事業者は、運輸局に事前に届け出た経路どおりにバスを運行させることが義務付けられています。運転手も経路間違いに注意が必要です。
・バス停飛ばし(路線バスが本来停車すべきバス停に停車せず、そのまま通過してしまうこと)を禁止しています。
・バス停以外での乗降は原則禁止となります。
運輸規則とは?
運輸規則(旅客自動車運送事業運輸規則)とは、自動車運送事業者が安全運行やサービス提供のために守るべきルールです。簡単に言うと、バスやタクシーなどの旅客運送事業を行う上で、どのような手順やルールで運行すべきかを定めたものです。具体的には、苦情処理、運賃、早発の禁止、乗車拒否、過労防止、点呼、運行管理、乗務員、旅客など、様々な項目が定められています。代表的なものに、以下のようなものがあります。
・旅客自動車運送事業運輸規則第十二条(早発の禁止)
要約すると、営業所に掲示した発車時刻前に、事業用自動車を発車させてはならない。
・旅客自動車運送事業運輸規則第十三条(運送の引受け及び継続の拒絶)
以下のような場合には、乗車をお断りすることが認められています。
・旅客自動車運送事業運輸規則第五十二条(物品の持込制限)
要約すると、乗客は、爆発物や火薬など危険物と判断されるもの、動物、通路や出入口をふさぐ大きなもの(自転車等)を持ち込んではいけない。これには、事業者ごとに細かい規定があるので、運転士になる際には、自社のマニュアルをしっかり確認する必要があります。
・旅客自動車運送事業運輸規則第五十三条(禁止行為)
要約すると、乗客は走行中にみだりに運転者に話しかけてはいけない。
バス運転士は乗務中、運転に集中しなければならない義務があります。そのため、お客様との会話は必要最小限にとどめなければなりません。お客様から降りるバス停を聞かれても、運転中には会話をせず、マイクアナウンスや停車中に対応します。
道路交通法
道路交通法は、道路での安全確保と円滑な交通を目的とした法律です。自動車、バイク、自転車、歩行者など、全ての道路利用者が守るべきルールを定めています。路線バスに関わるものを少しご紹介します。
バス停付近は駐停車禁止
路線バス運転士としてよく目にするのが、バス停付近に停車している車。実はこれ、道路交通法で禁止されている行為なんです。
道路交通法第四十四条の五(停車及び駐車を禁止する場所)
要約すると、バス停から10メートル以内の部分は駐停車禁止とされています。

停車なら良いと考えている人が多いと思いますが、停車も禁止です。
バスが停留所から発進しようとしたら、道を譲るのが義務
路線バス運転士をしていて、現実はなかなか進路を譲ってもらえないですが、道路交通法では、以下のようにあります。
道路交通法 第三十一条の二(乗合自動車の発進の保護)
要約すると、バスが発進するため進路を変更しようとした場合、可能な限り、バスの進路の変更を妨げてはならない。

これは知らない人も多いのかな。私もバス会社に入って認識しましたね。
路線バスには優先通行帯がある
道路交通法 第二十条の二(路線バス等優先通行帯)
要約すると、路線バス等の優先通行帯においては、原付や自転車など除外されたものを除き、またやむを得ない場合を除き、バスの正常な運行に支障を及ぼさないように、当該の車両通行帯の外に出なければならない。
その他|小銭20枚以上でのお支払いは拒否できるって知ってた?
あまり知られていませんが、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(通貨法)」で定められています。
通貨法 第七条(法貨としての通用限度)
貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。つまり、21枚以上の硬貨を使った支払いは受け取りを拒否しても良いとされています。

現場ではごく稀に、21枚以上の硬貨でお支払いをされる方がいらっしゃいますが、私の場合、この権利を行使したことはありません。
実際の現場ではトラブルを避けるため、やんわりとお願いする形をとるのが良いでしょう
まとめ|改善基準告示や法令知識はバス運転手の武器
バス運転士は単なるドライバーではありません。法律を理解し、安全・正確に業務を遂行するプロの公共交通従事者です。今回ご紹介した法令関係の知識は、実務で役立つものに絞った重要なポイントです。
ぜひ、この記事をきっかけに法令への理解を深めて、自信を持ってバス運転士の道へ踏み出してください!小銭の受け取りルールのように、一見関係なさそうな法律が関係してくる場面も多くありますよ。
よくある質問コーナー
Q:個人携帯電話の取り扱いはどうなっていますか?
A:運転中は法律で禁止されておりますし、休憩中以外は使用禁止している会社が多いです。違反すると罰則があります。
Q:アルコールチェックの基準は?
A:バス運転士は一般の基準(呼気中アルコール濃度0.15mg/L)より厳しく、たとえ微量でも反応すれば出勤停止の対象になる可能性があります。
Q:連続勤務13日ってOK?
A:改善基準上では、2週間に1日の休日なら最大13日可能。労基法的には12日が原則なので、36協定や変形制で調整が必要。
Q:改善基準告示の改正で、給料にどう影響?
A:残業時間が減って給料が下がった人も多くいます。基本給をアップして対応されている会社も増えてきました。
Q:36協定とは何?
A:法定休日や時間外勤務の協定。 自動車運転者は別枠で「年960時間」などを設定。