はじめに:バス停って路線バス専用?
路線バスの運転士として日々ハンドルを握っていると、ふと疑問に思うことがあります。バス停に、学校の送迎バスや幼稚園バス、自動車学校の車両が停まっている光景、見たことありませんか?「えっ、バス停って路線バス専用じゃないの?」と思ったことがある方も多いでしょう。
実は、バス停は原則として路線バスのために設置されたものですが、近年の法改正や地域の実情に応じて、一定の条件下で他の車両が利用することも可能になってきました。
この記事では、その背景やルール、安全性の考え方などを詳しく解説します。
路線バス以外がバス停を使うのはアリ?
本来のバス停の役割
道路交通法では、バス停は路線バスの発着のために設置されており、そのスペースを妨げるような駐停車は原則として禁止されています。つまり、本来は"専用"という考え方が前提です。
使われていないバス停、どうする?
しかし、地方を中心に路線バスの本数が減少し、"空きバス停"が増えてきました。これらのスペースをそのまま放置するのはもったいない、というのが現場の実感でもあります。
法律改正によって広がった活用の可能性
近年、国土交通省主導で「道路運送車両法および道路交通法の一部を改正する法律」が施行されました。この法改正により、条件付きで路線バス以外の車両もバス停を活用できるようになったのです。
地域公共交通の活性化及び再生に関する 法律等の一部を改正する法律について(国土交通省)
どんな車両が使えるようになったの?
- 幼稚園の送迎バス
- 特別支援学校のスクールバス
- 高齢者施設の送迎車両
- 福祉関連の移動支援バス など
など、地域のニーズに応じて柔軟に対応可能とされています。
利用には“厳しい条件”がある
この改正で重要なのは「一定の条件を満たせば使える」という点です。つまり、誰でも自由にバス停を使っていいわけではありません。
条件の一例(自治体ごとに異なる)
- 時間帯制限:路線バスの運行がない時間帯のみ利用可
- 車種限定:特定の用途(福祉、教育など)に限る
- 利用方法の制限:一時的な乗降のみ許可、長時間駐車はNG
- 事前の許可・届け出:警察や道路管理者の事前承認が必要
これらはすべて、路線バスの円滑な運行を妨げないこと、安全性の確保を前提としたルールです。
なぜ他の車両にも使わせるのか?その背景と意図
バス停の有効活用
空きバス停を放置するのではなく、他の公共目的に活かすことで、地域の利便性を高めるという狙いがあります。
交通弱者への対応
高齢者や障がいのある方がスムーズに移動できるよう、福祉車両が利用しやすい環境を整える必要が出てきたのです。
利用が広がることの課題
とはいえ、自由に使われては路線バスの運行に支障が出かねません。実際には以下のような課題もあります。
- バスの定時運行の妨げになる可能性
- 利用者・ドライバー双方への周知不足
- 事故や混乱の原因になるリスク
必要なのは「ルールの整備と徹底した周知」
自治体や運行事業者が、明確なルールを策定し、関係者や地域住民に丁寧に説明・周知することが求められています。
現役運転士の視点:現場で感じること
私自身、バス停に送迎バスが停まっているのを見て「これ、ええの?」と思ったことは何度もあります。ただし、調べてみるとちゃんとした許可を得て、安全に配慮した上で使われているケースも多いと分かりました。
一方で、勝手に停まっているように見える車両もあるのが現実です。もし不安や疑問があるなら、
- その施設(学校や送迎事業者)
- 自治体の交通担当課
- 警察署の交通課
に問い合わせるのが一番確実です。
まとめ:バス停は“公共の資産”として、地域で守り活かす時代へ
バス停はこれまで路線バスの専用スペースとして運用されてきましたが、今後は地域のニーズや実情に応じた柔軟な活用が求められています。
ただし、使い方には厳格なルールと運用管理が必要不可欠。私たち運転士も、利用者の皆さんも、バス停という公共の資産をどう守り、どう使うかを考えていく必要がある時代が来ているのではないでしょうか。
よくある質問(Q&A)
Q. バス停に幼稚園バスが停まっていたけど違法?
A. 自治体の許可を得て、時間帯や安全性が確保されていれば違法ではありません。
Q. 自分の事業所の送迎バスでも使っていいの?
A. 原則としてはNGです。継続的な使用には警察・自治体との協議や許可が必要です。
Q. うちの地域のバス停について詳しく知りたい場合は?
A. 自治体の交通課や道路管理者に問い合わせるのが一番確実です。