生協の職員として現場で働いていた頃、毎日いろんな組合員さんと接する中で、今でもふと思い出すような場面があります。
それは、ただ商品を届けるだけではない、人と人とのつながり。
今回はそんな生協時代の中でも、特に忘れられない5つのエピソードをご紹介します。
【1】「これ、あんたにあげるわ」——真夏のスポーツ飲料と梅干
ある猛暑の日、汗だくで商品を届けに行ったときのこと。
おばあちゃんの組合員さんが私の姿を見るなり言いました。
「あんた、倒れそうな顔してるで。これ、飲み」
そう言って手渡されたのは、スポーツ飲料。
「塩分もとらなあかんよ。梅干しも持って帰る?」と笑うその優しさに、心がじんわり温まりました。
新人時代、暑さで気持ちが折れそうになったあの日、組合員さんのひとことがどれだけ励みになったか。今でもはっきり思い出します。
【2】「いっぱい作ったら、持って帰り?」——思い出の味とともに
ある日、組合員さんと世間話をしていたら、その組合員さんは思い出したかのように、こう言いました。
「そういえば、カキフライ好きだったわよね。作りすぎたらから持って帰り」
以前に、私が生協の牡蠣をお勧めした時に、自分も好きだと伝えたことを覚えてくれていたようで。
何気なくおすすめしたことも、ちゃんと覚えてくれているんだなと心がじんわりしました。
今でもカキフライを食べるとその組合員さんからいただいたカキフライの味を思い出します。
【3】「あんた、顔色悪いで」——逆に見守られる存在に
ある冬の夕方、少し疲労が溜まっていた日、いつも元気な私に異変を感じた組合員さんがこう言いました。
「今日、顔色おかしいで。無理したらあかん」
と言われ、黒ニンニクをお土産に持たされました。
驚きと同時に、**「あぁ、見られてるんやな」**と思いました。
届ける側と思っていた自分が、逆に見守られていたのです。
ただの“職員と組合員”という関係ではなく、地域の中の人間同士のつながり。
生協の現場でしか味わえない空気が、そこにはありました。
【4】「あんたの担当者ニュース、家族みんな好きやねん」
配達の際、ある組合員さんが嬉しそうに話してくれたのは、
私の担当者ニュースで家族が盛り上がっているという話。
「この配送担当の人、おもろい人やね。一度会ってみたいわ」
ってうちの旦那が言うてたで、と。
私は、鬼嫁日記と称し、妻にいびられている私を紹介したり、
おすすめ商品を書いているだけでしたが(笑)
配達した商品の先にある、食卓の笑顔や、家族との時間。
“届けて終わり”ではない、生活の一部としての生協を実感した瞬間でした。
【5】「最後に会えてよかった」——定年退職の日の涙
転職が決まり、最後の配達日を迎えたとき。
長年担当していた地域の組合員さんから、こう言われました。
「もう来てくれへんの?さみしくなるなあ」
「あんたやから頼れてたんやで」
思わず涙が出そうになりながら、「こちらこそありがとうございました」と頭を下げました。
最後には餞別までいただき、「この仕事やっててよかった」と心から思いました。
まとめ:人とのつながりこそ、生協の魅力
商品知識や販促も大事ですが、
やっぱり一番記憶に残っているのは、人とのつながりです。
誰かの生活を少しでも支える存在になれていたなら、それは本当に幸せなこと。
今はもう違う道を歩いていますが、生協職員としての経験は一生の宝物です。