バス運転士という仕事には、他業種にはない独特の働き方があります。特に「勤務形態」と「勤務時間」は、一般的な会社勤めとは大きく異なり、最初は戸惑う人も少なくありません。
この記事では、現役バス運転士の視点から、勤務形態や勤務時間、1週間のスケジュールの実例、休日の取り方まで詳しく解説します。
40代・50代から転職を検討している方にとって、リアルな現場の情報としてお役立てください。
バス運転手の勤務形態は5種類ある|社員は選べないのが基本
バス運転士の勤務形態は、おおまかに以下の5種類に分類されます。
勤務形態 | 典型的な時間帯 | 特徴 |
---|---|---|
早番勤務 | 5:30〜13:00頃 | 朝が非常に早いが、午後は自由時間に使える |
遅番勤務 | 13:00〜21:00頃 | 終バスを担当。夜道や酔客への注意が必要 |
中休勤務 | 6:00〜10:00/16:00〜20:00 | 昼の空き時間が長く、拘束時間が長め |
通し勤務 | 5:30〜21:00(休憩あり) | 早番と遅番をやる勤務 |
日勤勤務 | 8:00〜19:00前後 | 1日勤務で通し勤務よりは拘束時間短め |
正社員の場合、これらの勤務形態は本人の希望では選べません。
シフトは、労働基準法およびバス運転手向けの「改善基準告示」に基づいて、バランス良く自動的に割り振られます。
多様な雇用形態
一方で、契約社員やパートとして働く場合には、勤務形態や路線、曜日などをある程度選べるケースもあります。
そのため、「自分に合ったペースで働きたい」「家庭の事情に合わせたい」という方は、働き方の選択肢として契約形態を検討するのも一案です。
- 土日祝休み(平日限定勤務)型: 土日祝日と年末年始が休みで、平日のみ勤務する形態です 。
- 路線限定勤務型: 限られた路線だけを乗務する働き方です 。
- 短時間・パート型: 週1日以上、1日4時間以上から勤務可能で、個人のライフスタイルに合わせて働けます 。
勤務時間と1日の流れ|朝が早くても午後は自由に使える
バス運転士の1日のスケジュールは、勤務形態ごとに大きく異なります。ここでは代表的な「早番勤務」を例に、その流れを紹介します。
【早番勤務の1日スケジュール例】
時間帯 | 内容 |
---|---|
5:30 | 出勤、点呼、アルコールチェック |
5:45 | 点検後、営業所出発 |
6:30〜12:00 | 通勤ラッシュに対応(数本の路線を担当) |
12:30 | 営業所へ戻り、洗車・給油など |
13:00 | 終了点呼、退勤。以降は自由時間 |
このように、早朝から始まるものの、退勤時間が早いため午後の時間を活用できるのが早番勤務の特徴です。
勤務時間と拘束時間の違い
バス運転士の労働時間について考える上で重要なのが、「実働時間」と「拘束時間」の違いです。
- 実働時間:バスの運転・点検・乗務前後の作業など(おおむね8時間以内)
- 拘束時間:休憩や待機時間も含む会社滞在時間(改善基準では13時間以内)
この拘束時間には、仮眠や中休などの休憩が含まれ、法律上の制限があります(詳細は「改善基準告示」参照)。
午前勤務と午後勤務|どちらも一長一短あり
バス運転士には「午前勤務(早番)」と「午後勤務(遅番)」があります。それぞれに魅力と課題があるため、自分の生活スタイルと照らし合わせて考えてみましょう。
午前勤務(早番)のメリット・デメリット
メリット
- 早く帰れるので午後の時間が自由
- 子どものお迎えや病院なども行ける
- 始発の運行は渋滞が少ない
デメリット
- 起床が非常に早い(4時台も)
- 冬場は暗い中の運転で緊張感がある
午後勤務(遅番)のメリット・デメリット
メリット
- 朝はゆっくりできる
- 朝活がしやすい
- 平日の昼間に用事を済ませられる
デメリット
- 終バス担当で帰宅が遅くなる
- 夜間の運転は視界・安全面で注意が必要
中休勤務は本当にきついのか?
バス業界の中でも「中休勤務」は慣れるまでがひとつの山場です。まず、拘束時間が長いため、1日を通して自由な時間が少なく感じます。
しかしながら、その中休時間をうまく活用できれば、仮眠や買い物などに使える“自分だけの時間”にもなります。つまり、慣れと工夫次第で快適な勤務スタイルに変わっていくのです。
また、日勤と違って1日の運転時間は分割されるため、体力的な負担が軽減されるケースもあります。
そのため、はじめはつらくても、中休勤務を乗りこなせると日々の働き方の幅が広がると実感できます。
労働時間と法的基準
バス運転手の労働時間は、厚生労働省の「改善基準告示」により以下のように定められています。
- 1日の運転時間:2日平均で1日9時間以内
- 連続運転時間:4時間以内(運転の中断は1回連続10分以上、合計30分以上)
- 4週平均1週の拘束時間:原則:65時間
- 1日の拘束時間:13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回まで)
- 勤務終了後の休息時間:継続11時間以上、最低でも9時間
路線バス運転手の1週間のシフト(例)
以下は、5勤2休のバス会社で考えてみたシフトの一例です。
日数 | 勤務形態 | 勤務時間 |
---|---|---|
1日目 | 日勤 | 7:10~20:30 |
2日目 | 遅番 | 15:00~22:30 |
3日目 | 遅番 | 14:30~22:30 |
4日目 | 日勤 | 8:30~20:00 |
5日目 | 早番 | 5:50~13:30 |
6日目 | 休み | - |
7日目 | 休み | - |
このように、勤務形態が日々変化し、法令を守りながら休息時間を確保し、シフトが組まれています。この1週間のシフトも毎週変わります。
バス運転士の勤務は、基本的に「週休2日制」が原則ですが、希望によっては休日出勤をして月の収入を増やす人が多数います。もちろんこれは強制ではなく、あくまで「希望制」。
会社側も休日出勤手当を用意しているため、「稼ぎたい派」にとってはありがたい制度です。
実態としての「週6勤務」
正社員の多くは、収入確保のために日曜日または土曜日に1日出勤し、実質週6勤務になることが一般的です。
もちろんこれは強制ではなく、あくまで「希望制」。
会社側も休日出勤手当を用意しているため、「稼ぎたい派」にとってはありがたい制度です。
バス運転手の休日事情|平日休みと曜日感覚のギャップ
バス業界では公休日が毎月ズレるようになっているため、平日が多くあります。この「平日休み」に最初は違和感を覚える人も多いですが、慣れてくるとむしろ快適に感じることも。
平日休みのメリット
- 銀行・役所・病院に行きやすい
- 飲食店や観光地が空いている
- 子どもの学校行事に参加しやすい(平日開催が多い)
平日休みのデメリット
- 家族と休日が合わないことがある
- 曜日感覚が崩れがち
- 社会人の友人と予定が合いにくい
実際に筆者も、「水曜日が日曜日の感覚」になったり、「今日は何曜日?」と考える時間が増えたという経験があります。
40代・50代からの転職でも活躍できる理由
バス運転士は中高年の未経験者にも門戸が開かれた職業です。実際に、40代からの転職者も多く活躍しており、過去の職種を問わず新たなキャリアを築いています。
年齢より「やる気」「安全意識」「接客力」が重視される
- 大型二種免許取得支援制度を用意している会社も多く、普通免許(AT限定不可)さえあればスタート可能
- 接客業や営業職出身者は、コミュニケーション力が活きる
- 年齢よりも「誠実に働けるか」が評価される傾向
Q&A よくある質問
Q. バス運転手の勤務間インターバルはどのように管理されていますか?
A. 勤務終了後、継続して11時間以上の休息期間を設けることが基本とされています。ただし、最低でも9時間の休息期間を確保する必要があります。遅番勤務の翌日勤務は、最低のインターバル9時間の場合が多くなります。
Q. 中休勤務の拘束時間が長いと聞きますが、実際はどうですか?
A. 中休勤務は、朝と夕方に勤務し、日中に3時間以上の休憩を取る形態です。この休憩時間は家に帰ることもできる時間となり、拘束時間となりません。そのため、実働時間は8時間程度でも、休憩時間を入れた拘束時間で計算すると16時間を超える場合もあります。
Q. バス運転手って本当にきつい仕事ですか?
A. 身体的・精神的に楽な仕事ではありませんが、「きつい」と感じるかどうかは人それぞれです 。長時間勤務や不規則なシフト、お客様対応など大変な面もありますが、それ以上にやりがいや地域貢献の喜びを感じられる仕事です。僕自身は、大変さ以上にこの仕事の魅力に惹かれています。
Q. 中休の時間は何をして過ごすのがいいですか?
A. 過ごし方は自由ですが、仮眠を取って体力を回復させたり、食事を済ませたり、資格の勉強や趣味の時間に充てたりと、有効活用することが大切です 。営業所によっては休憩室が充実している場合もあります。僕の場合は、ブログのネタを考えたり、軽く体を動かしたりしています。
Q. 給料は実際どれくらいですか?
A. 会社や地域、勤務形態によって大きく異なりますが、厚生労働省のデータでは、路線バス運転手の平均賃金に関する情報も提供されています 。基本給に加えて、残業手当や深夜手当、無事故手当などが加算されるため、頑張り次第で収入アップも可能です。
Q. 休日はどれくらい取れますか?
A. シフト制が基本で、週休2日制の会社が多いです。4勤1休型のように、4日働いて1日休むサイクルや、土日祝休み型の勤務形態もあります 。有給休暇も取得できますので、計画的にリフレッシュできます。
Q. 人間関係はどうですか?
A. 基本的に一人での乗務が多いですが、営業所では同僚や運行管理者とのコミュニケーションが活発です。休憩中に情報交換をしたり、困ったことがあれば相談できる環境があります。僕の会社では、和気あいあいとした雰囲気で、人間関係で悩むことはほとんどありません。
Q. 女性でもバス運転手になれますか?
A. はい、もちろんです。近年、女性バス運転手は増加傾向にあり、多くの会社が女性が働きやすい環境整備に力を入れています。早番勤務は女性ドライバーに人気がある勤務体系の一つです 。体力的な不安があるかもしれませんが、研修制度も充実しており、安心して働ける環境が整っています。
Q. 運転技術に自信がなくても大丈夫ですか?
A. 大型第二種免許は必要ですが、入社後の研修で運転技術はしっかりと身につけられます。未経験から始めた人もたくさんいますので、運転に自信がなくても心配ありません。大切なのは、安全運転への意識と、お客様へのサービス精神です。
Q. 大型二種免許の取得方法は?
A. 自動車学校に通うのが一般的です。多くのバス会社では、入社後に免許取得費用を全額または一部補助する制度を設けているため、未経験からでも挑戦しやすい環境です。
Q. どうしても早起きが苦手です。向いていないでしょうか?
A. 最初は誰でも不安です。最初の1〜2週間を乗り越えれば、自然と体が順応します。勤務パターンは早朝だけでなく午後からの勤務もあるため、完全な朝型でなくても対応可能です。体が慣れれば早朝勤務もむしろ快適。
まとめ:バス運転手の勤務シフト攻略ポイント
- 生活リズムの工夫で不規則勤務でもストレス軽減
- シフトの特徴を理解し、自分に合うリズムを見つけよう
- 法定基準を確認し、安全と健康を守ろう
- 中休勤務は“ゆとり戦略”として使える